大手を諦めたら楽になった。ニッチなBtoB企業の「幸福すぎる」選択
2019卒 女性
メディア系BtoB企業就職予定
もぐみさん
子供のときから絵を描くことが大好きだったもぐみさん。「どうせ就活するなら大手に行かなくちゃいけない」という使命感から、大手のデザイン職に目を向けていました。でも、就職するのは200人規模のニッチな会社。「考えるのが好き」で「ちょっと根暗」なもぐみさんにぴったりだとお見受けしました。そんな会社に出会ったきっかけと選び方をお聞きしました。
——就職活動の軸を教えてください
「伝える」ことをキーワードに、出版や新聞社を受けていました。本命は、新聞社のデザイン職でした。
——なんで「伝える」というキーワードだったんですか
子供のときから絵を描くのが好きで、寝食忘れるくらい没頭している変な子だったんです。
大学に入ってからも好きは変わらず、フリーペーパーサークルで写真を撮ったり、Illustratorでデザインしていました。こうしたことを仕事にできたら幸せだなあって思っていました。
逆に、好きじゃないことにはモチベーションがゼロになる性格なので、マスコミやエンタメ系に絞りました。
——就職活動はいつから始められましたか
はじめは就活をしないでデザインの専門学校に行くか悩んだんですよ。
でも、流れに乗る方が楽だったから、大学3年生の夏から周りに合わせて就活を始めました。
夏インターンで出版社を1社応募したんですが、すんなり選考が通ってしまって。「あれ、案外いけるんじゃない?」と思って、ちょっと浮き足立ったんです。気づけば、むくむくと大手病にかかっていました。
——大手ばかり見るの、わかります
憧れと、腐っても早稲田という気持ちがありまして。
私は責任感が強かったので「就活を始めたからには大手に行かなければならない」「周りを納得させなければならない」と思って、大学3年の2〜3月は突っ走りました。合同説明会でも広告、新聞、おもちゃ、ゲーム、出版などの有名企業を回っていましたね。
今思うと、就活ハイになっていたんです。
「やったるで〜〜!大手、行ってみよう!ESバンバン書くぜ〜〜!」
って気持ちで、モチベーションを高めに置いていました。疲れたら、エンタメに触れて「こういう楽しい気持ちを作る仕事に就くんだ!」って奮起していました。
——すごい!バリバリな就活生をやっていたんですね。。。
大手志向のときは、就活を通して社会の仕組みを学んでるような気がして「ぐーんと成長している!」って思っていました。心は情報過多に疲弊してたんですけどね。毎日の選考結果メールと就活サイトからのDMに心を削られていました。
体力がないので、気力だけで乗り切ろうとしていました。
心隠して、背伸びして……ガタがきたんですが。
——どこらへんから違和感を感じはじめたんですか
説明会の段階で、就活生の数に圧倒されました。大手志望の学生の黒スーツの大群の中で私は生き残れるだろうか、とプレッシャーを感じましたね。
あとは、集団面接のときです。薄々と気づいていたんですが、エンタメに進む人は明るい人が多くて、私とは人種が違うなって思ったんです。
集団面接で、私がそこにいるだけで空気が違ってて。……なんて言っていいのかわからないけど、一緒に面接している就活生はすごく器用で世渡りが上手そうで、自分がいたたまれたくなったんです。「ええ、こんな小さいエピソードをうまく話せるんだ。すごい」って思ったりしました。
——確かに、もぐみさんのポートフォリオは、他の学生のエピソードに負けないほどしっかりしていますね。Twitterで有名な美大系インフルエンサーや企画プランナーの制作物とも引けを取らないと思うんですが……
そういう人たち、一番苦手な人種です(笑)「大学生/プランナー」とか、スラッシュで区切っている人ですよね(笑)
私は不器用だけど頑張ってる人とか、黙々と作業に没頭している人とか、拙いけど根がいい奴とかになることを目標としているので、そうやって自分を大きく見せて売り込むのが苦手で。
(ポートフォリオ。シンプルでエレガントな誌面デザインから、受験生応援の面白企画立ち上げもしていて、幅の広さを伺えます)
——思い出深い就活のエピソードってありますか
本命の新聞社が最終で落ちたことです。
厳かな雰囲気で、これからの新聞の意義とか、グラフィックスの意義とかを聞かれたんです。その間、面接官の方々が私の目を見ずに、ただポートフォリオばっかり読んでいるのが気になったんです。
それで何を血迷ったのか「私のことをちゃんと見てください!私やる気です!」って言っちゃったんです。自分を見てくれないのは嫌だな〜〜と思ったので、本当の気持ちを言って見たら、役員の方々がびっくりした様子で変な雰囲気になっちゃったんです。
——そうだったんですか……。思い切りましたね。
自分は良くも悪くも正直なんです。でも、就職活動の間は嘘ついて周りの雰囲気に合わせようとして。
この面接で、しわ寄せした分が爆発しました(笑)
——もぐみさんにとって「大手企業に入りたい」という気持ちと「正直に生きたい」という二律背反の気持ちがあったんですね。
私の就活は、最初に高すぎる目標を持ったら苦しくなって喘いでしまい、地に足をつけ始めてちゃんと歩けるようになったんです。
今思うと、そんなに明るくない性格だし、急に華やかなことはできないし、正直にお話しをして受け入れてもらえた内定先の方がよかったんですよね。何か発信したいのに、不器用で恥ずかしがり屋の私にはぴったりの会社でした。
***
——内定をもらったのは、どのような会社ですか
何会社っていうんでしょう……。メディアに写真提供をする、BtoB企業です。
——いつからその会社のことは知っていたんですか。
テレビや雑誌など色々な媒体で目にするので、社名だけはずっと昔から知っていました。
就職先として意識し始めたのは、大学4年生の4月です。その時期、就活で頭がいっぱいになって、どんな会社名でも目にしたら【○○ 採用】って調べていたんですよ。内定先も普通にマイナビに載ってたらしいんですけど、私はそのやり方で採用ホームページにたどり着きました。実を言うと、「まだ募集しているし、ついでに受けとくか」ぐらいの気持ちでエントリーしました。
——大手志向からニッチな企業に転向したきっかけはどこからですか。
きっかけはありません。とりあえず受けてみただけです(笑)
でも、結果的にこの選考で、就活でズタボロになった自尊心を引っ張り上げられたって感じです。
選考が全然違ったんです。食卓くらいの近さで、柔らかく、対等な関係で、目を見て話せる面接だったんです。面接が終わった後、心地よさが胸に残るんですよ。もう、途中からこの会社が大好きになっていました。
——今までの話を聞くと、もぐみさんはメディア系にこだわり続けたようですが
いいえ、食品や小売にも浮気しちゃいました(笑)
不思議なことで、内定先の選考で勢いがついたのか、それらの選考もうまくいったんですよ。
でもメディア系以外は「ちょっと違うなあ」という気持ちがあったので、6月の最終週に内定を頂いたら他は選考辞退をしました。だから、内定は1社だけです。
——いい会社に出会えてよかったですね(ほろり)
選考過程で相性の良さがわかりました。大きくはない企業だから、次回の選考日程もメールでやり取りするんですよ。選考サイトで空欄になってる時間帯のボタンを押すロボットみたいになっていた今までとは違うんですよね。
しかも、選考期間もゆったりとしていました。「企画書を作ってきてください」「もし仮に〇〇についての雑誌の特集を作るならどんな写真を選びますか」というような、考えてないとできない課題が与えられたんです。雑誌の特集の課題が与えられたときはフリーペーパー制作をするサークルに入っていて良かったと感じました(笑)
面接でも「好きな写真家はいますか」と聞かれて「いません。でも好きなイラストレーターはいます」と正直に話しても、好意的に伝わったんですよね。小さい会社は守備範囲が違う方が面白くて、そういうところも自分の個性が活かせると思いました。
***
——では、就職活動の簡単なことについて聞かせていただきます。大手志向だったときから、OB訪問はしてきたんですか。
広告系のOB訪問を少ししましたが、いくらOB訪問に行ってもダメなところはダメでした(笑) やる気が無くても、やる気を出しすぎてもうまくいかないので、就活は本当にフィーリングだと思いました。
——ESはどうですか?大手はES落ちが多いというイメージですが
ESはだいたい通りました。落ちるたびに反省会をしていたことと、親や友達に添削してもらったのが良かったんですね。親には人事目線で、友達は私のキャラクターと齟齬がないかチェックしてもらえて良かったと思います。
だいたいは、一次面接や筆記で落ちたんです。面接が慣れてないのと、筆記勉強でのテクニックがなかったことですかね。
筆記試験の作文って、周りで出版社に内定した人に聞くと、ネタを数個用意してどれが出てもいいように対策するらしいんです。でも、私は作文ってテーマを見た瞬間にパッションで書くものなんじゃないのかなって思ってて、そういうところも合わないなって思っていました。
結局、器用な人が選考進むんですよね。私は不器用なので劣等感を感じました。
——資格は何を持っていましたか。
私の就職は、美大生や専門学校生との戦いだったので、色彩検定は持ってて良かったと思います。
——福利厚生は重視しましたか?
全然見ていませんでした。子供のときから寝食忘れて絵を描いてたし、好きなことを優先する上では仕方ないと思います。フル活動で頑張ります。
——幸せそう!最後に、就活通して思ったことを教えてください。
「等身大で行かないと、返ってくるのは自分」です。
背伸びするって辛いですよね。面接で自分を華やかに語るだけでもすごいことなのに、会社に入ってからも何をできるかアピールし続けないといけないのは難しいと思います。大手に就職するからといってまったく人間性が変わるわけでもないし、自分らしくいられるところを選択して良かったと思います。
等身大の自分を認めてくれる企業に出会うと、自己肯定感が上がりますよ(笑)
——もぐみさんは内定先を「大手じゃない」と言っていますが、業界では唯一無二のポジションにある、いい企業ですよね。
はい、そう思います。俯瞰的にいろんな会社の動きが見れるし、BtoBって「世の中に隠れているけど、私もいるよ」って思えて幸せじゃないですか。
【得意な事】と【やりたい事】と【できること】の最大公約数の会社に入れたと思います。