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「ヒッチハイクすればよかった」と思った就活期。狂っていたと振り返る理由

File006:くまがいさん

19卒 男性

早稲田大学文化構想学部 4年

デジタル系広告代理店内定

 

 

小説家を目指して大学に入学したくまがいさんは、爽やかで真面目な好青年です。器用な性格ゆえに就活を早めにはじめ、誰もが知っている広告代理店を第一志望に動いていました。夏インターンのときは「ヒッチハイクしとけばよかった」「商学部に入ってればよかった」と考えていたそうですが、ある出来事をきっかけにモチベーションが0に。結局、本選考をほとんど受けないまま、早期選考で決まったデジタル系広告代理店に進路を決めました。

なにが彼をそうさせたのか、彼は就活から離脱してよかったのか、振り返ってもらいます。

 

 

 

 

「就活ってダサい」って思ってた

 

——さっそくですが、人物像がイメージしやすいようにくまがいさんってどんな人なのかお聞かせください

埼玉県の公立高校出身です。高校時代はサッカー部に所属していたんですが、ずっと小説家を目指していました。だから文化構想学部の文芸ジャーナリズム論系(以下、文ジャ)に進学し、今は創作ゼミに入っています。

 

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——ありがとうございます。このサイトをはじめて6人目のインタビューですが、読者の方から「実際、意識高い」「すごい人多すぎ」との意見をもらいます。くまがいさんの大学時代はどうだったか、先に確認してもいいですか?

僕は全然意識高くないですよ(笑) サークルは文化系で、役職には就いてないです。一応パフォーマンスサークルなんですけど、一学年10人くらいの全然キラキラしてないところでした。

 

大学生活というと……入学してすぐweb制作アルバイトをしていました。1年半続けたんですが、そこがなかなかブラックで!

色々と問題を起こして、最終的には解雇されました。

解雇されて「小説を書こうと思って文ジャに入ったのに何もしてない」って気づいたんですよ。そこからはバイトしないで、本を読んだり書いたりしていました。

 

——まさに文ジャ!って感じですね。なんとなく人物像が見えてきたんですが、就活しなそうな雰囲気ですよね……

1~2年前は、自分でもそう思っていました。権威に媚びを売る就活と、自分が好きな小説の世界って正反対なんです。「就活ってダサい」と思っていましたね。

 

——そこから、なんで就職活動をすることになったんですか?

きっかけは3つあります。

 

まず、2年生後期に佐々木中先生のニーチェの授業を受けたことです。それが

とても熱量のある講義で、ああいまこのひとはものすごいことを語っているんだろうなと思いながらもまったく理解できなくて、こんなんじゃ学問の世界ではやっていけないと突きつけられたんです。

2つ目は、小説の創作についてタイムリミットが近づいてると思ったことです。もともと3年やって成果が出なかったらダメだなという考えがありました。

3つ目は、サークルの先輩の影響です。商学部の就活ガチ勢の先輩とよく絡んでいたので、単純に影響されました

 

——そうした要因が合わさって、就活に踏みきられたんですね。はじめてみて、嫌になりませんでしたか?

最初は「俺、就活してるわ〜ww」っていう感じで、就活をしている自分を遠くに据えてやっていました。

6月にはじまった夏インターンも、好きなタレントがCMをやっている企業を受けたり、富士急ハイランドで遊べるから富士急行を受けたり、本当に遊びだったんです。知っている食品・金融・メーカーをエントリーして、ときどき有名企業の5daysに受かるから「俺いけるわ」モードになっていきました。

文ジャ・サークルの周りは就活してないから「自分は違うことをしているぞ」って優越感がありました。承認欲求が歪んでたんでしょうね(笑)

 

就活は人を狂わせていく

 

——夏インターンはどうでしたか

参加してみて、就活意識が高まっていきました。

インターンでいろんな人に会うと「世界1周した」みたいな華やかな経歴が並ぶんですよ。「俺何もないな」って思って、こんなに引きこもって小説ばかり書いていたことを後悔しました。商学部に行った方がよかったかもと後悔したこともあります。

 

——性格が変わりはじめましたね……。では、秋インターンも受けられたんですか

はい。でも、ESでほとんど落ちました。

夏までは学歴や人柄重視の選考だった会社も、やっぱり秋からは「学生時代力を入れてきたこと」(以下、ガクチカ)で判断してくるんですよ。いよいよ企業の選考が始まったぞって気がしました。

 

今思うと、この頃からやばくなりました。「早稲田祭に向けてがっつりやってるパフォサーは馬鹿だな」って思ってたんです。

 

——ガクチカは何を話してたんですか?

ガクチカをこのタイミングで変えたんですよ。ES通過率は高くなりましたが、このときに自分の中で何かが崩れていく音がしました。

 

インターンのときは、クリエイティブをアピールしたかったので、高校のときにクラスの演劇で「脚本・監督・主演」をしていたってエピソードを言っていました。今思うと、高校時代のことを話すなんて、ウケが悪そうですね(笑)

 

秋からは、大学1~2年のときにやっていたweb制作バイトについて話すようになりました。もちろん“ウケ”がいいのはweb制作のバイトっていうのはわかってたんですよ。でも、いい思い出ではないし、バイトに力を入れていた自分っていうのもムカつくし、言いたくなかったんです。

でもOB訪問で相談するうちに、アピールするエピソードをこれにすることになりました。就活にのめり込んでしまったと思いました。

 

——OB訪問で相談……意識が高いですね

一番最初は、母が広告代理店の人を紹介してきたんです。「同窓会で再会したからお願いしといたよ」って。会ってみたら広告代理店の人って、クリエイティブで、シュッとしててかっこよかったんです。だから、その会社を第一志望にして、OB訪問をしてモチベーションを保っていました。

 

——モチベの保ち方が就活生って感じですね……

結局10人くらいに会いました。

いつも会社の社員食堂で会うからメニューを覚えたりして(笑)

 

「Matcher」などのアプリで送りまくったんですが、アプリはスルーされるなって思いました。だから、母の紹介から芋づる式で紹介してもらいました。

 

matcher.jp

 

——「就活ってダサい」って言ってた人と同一人物と思えない変わりっぷりでしね!

陳腐な映画のあらすじみたいですよね。絶対にやりたくなかったのに、どんどんはまっていって。

 

さらに就活ガチ勢になるエピソードがありまして。

年末に後輩と飲みに行ったんですよ。その子は僕のことをすごく慕ってくれていたんです。久しぶりに会ったとき、僕はインターン帰りでスーツを着ていたら、

「就活してるんすか。ショックです。そんな風になっちゃったんですね」

って言われたんです。後輩のいうとおり、就活しないキャラだったのに、気づけば半年間も積み重ねて染まってしまってた。でも後戻りできないから、「こんな大手行ったんだって思わせるぞ!」って意地になりましたね。

そこから冬インターンは、大手広告に絞って参加しました。

 

——インターンのESが通るのがすごいと思います!

通る用のESって作れるんですよ。

例えば、新聞社に応募したときは「秋インターンは演劇のことを書いて落ちたから、冬インターンではweb制作のエピソードを書こう」って思ったらまんまと通ったり。

 

広告会社でも、クリエイティブ志望から営業志望に変えました。

広告って基本的に営業の割合が多いんです。僕は絶対営業は嫌だったんですが、通過率を考えて「営業でもクリエイティブの良さがある」「クライアントの課題を見つけるってこと自体がクリエイティブだ」って自分を納得させていました。

 

半年やってきたけど、やっぱり就活ってクソ。

 

——インターンも行ってて、OB訪問も行ってたって、順調な就活生ですよね。本選考ではどうでしたか?

はい。年内が意識の高さの頂点で、早期選考のコンサルや広告代理店を受けていました。

 

ただ、2月にコンサル会社の最終面接があって、社長と1対1の圧迫面接だったんです。

「文ジャに行っています」→「何の意味があるの?」、「小説を書いています」→「夢見すぎじゃない?」みたいに、全部を否定してこられたんです。入社後のプレッシャーに耐えられるかの判断なんでしょうが、それにしてもこのやり方はあまりにもクソだなって思いました。

 

それで【これが就活だ】ってわかったんです。なんだか就活への反発意識が蘇ってきたんです。「半年やってきたけど、やっぱり就活ってクソ」って。

 

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——ここで自分を取り戻すんですね!

そうです。それに、並行して受けていたデジタル系広告会社の選考がすごくよかったんです。この会社は営業もないので「もうここでいいかな」「俺、営業やりたくない」って気持ちが溢れて……。結局、この会社が就職先になりました。

 

——内定先のどこに惹かれたんですか?

面接の内容が「この飲み物を担当するなら、どういうPRにしますか?」って内容で、その場でものを考させられる問題だったんですね。

 

あと、小説の話を単体として聞いてくれたんです。他の会社って【小説で学んだことを会社でどう活かすか】ってことを聞いてくるのですが、正直そんなものはないんですよ(笑) だから、単体の活動として聞いてくれる会社は誠実さを感じて「ここに行きたいな」って思いました。

 

——それでも、大手の本選考は受けられたんですよね?

3月に入ってからは、やる気がない状態だったので、大手広告代理店と大手メーカーを6社エントリーしました。

 

ずっとモチベーションにしていた広告代理店は、4月中旬の面接で玉砕しました。絶対営業に行きたいって言わないところで「クリエイティブしか行きたくないです」って口に出しちゃったんです。直前までサークルでの営業の話とか、web制作アルバイトの話とかを準備していたのに、全部出てこなくて小説の話をしてしまいました。

結果を聞かないでも落ちたってわかったので「今まで何をしていたんだろう」という思いが込み上げてきて、一気に覚めました。そのまま家電量販店でペンタブを買って、アニメを作ったり絵を描いたりする生活が始まりました。ブラックバイトを辞めた後に本漬けの生活を送ったのと同じパターンです。

 

(くまがいさんのnote)

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怒りを原動力に創作していたくまがいさんのnote、めちゃめちゃ面白いです。これは「就活のやり方で恋愛をやってみた。」という文章。お祈りの「くまがいくんが誰かと幸せになること祈ってるよ」が秀逸です



 

——それで本選考は終了ですか。

一応、夏インターンをした会社が【インターン選考】をしてくれたのでそれだけ受けました。裏ルートみたいなもので、6月に即役員面接という形なんですよ。「大手も受かったけど蹴った」って友達や親に言いたいから受けました。

 

一回裏ルート知ると普通の選考に戻れないですよ。

内定先のデジタル系広告代理店も早期選考で倍率も低いしじっくり見てもらえましたし。そこだけは早めにインターンをしていて良かったと思います。

 

——そうなんですね。くまがいさんのnote面白く拝見していますが、就職してから小説は書かれないんですか

小説にも未練はあります。就職先が副業推奨しているので、書き続けようと思います。

 

僕は、刹那的に生きている小説家志望の人間になりたかったです(笑)「就活しようと思ったけどESの締切が守れない」とか「単位落としてるから就活できない」とかの人って憧れます。でも、自分は器用だから就活ができちゃったんです。将来や老後の不安も拭えなかったですし。

 

——ちなみに、小説家志望なら、出版社は受けなかったんですか。

出版社だけは行きたくなかったんです。

高校生のときは「小説家か出版社かな」って思ってましたが、文ジャでやってるうちに仕事にしちゃいけないなって思いました。売れる・しょーもない小説を作って売りに出すのは死にたくなるだろうなって分かってたので(笑)

 

——そうなんですね。就職先は、くまがいさんに合っているところでよかったですね。春から頑張ってください!

今でも、全然働きたくないんです。働きたくないけど、働かなくちゃいけないなら、この会社しかないなって思っています。

文化構想学部の割合も多く、面白い会社で、副業も推奨されているから小説も書き続けられる。いろいろ考えたらいい選択だったなって思いますね。

 

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